2012年7月29日日曜日

安部公房の処女作


安部公房について思うことを箇条書きにメモして後日の備えとしよう。

1。処女作には、その作家のすべての芽があるといわれる。その通りで、終りし道の標にという作品は、その後の安部公房の作品のプロットの原型になっている。それは、どのようなプロットであるか。

(*)それはひとことでいうと孤児の文学である。

2。これは、家長に、つまり長男に生まれついたことを否定する男の書いた小説だ。従い、この作家の書く小説は、消極的な(そういう意味では屈折した、裏返しの)家族小説、一族小説である。だから、偽の父親も出て来る。

3。安部公房の小説には、主人公が陰陽ふたりいる。

4。ノート形式での叙述。

5。芥川賞を受賞した作品、壁、これを第二の処女作と呼べるとしたら、やはりこの作品にもその後の安部公房の諸作品に登場するイメージが書かれているからだ。試みに列挙すれば:無名の主人公、病院、便所、箒をもった老人、制服、泥棒と探偵、洞窟と迷路、偽の父親、自分の部屋(空間)、そこからの脱出、自己から自己へ、ノアの箱舟。

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